死んでもあなたに愛されたい
「ぼくには興味持ってくれないんですか?」
「なんで?」
「実は毒林檎の会でした〜って、だいぶインパクトあるカミングアウトだと思うんですが」
「あっそう?」
「……冷たい」
興味はない。感心はしてる。
正体を知って、むしろ腑に落ちた。
出会ったときから、ただならぬ猛者のオーラがぷんぷんしてた。
魁運やマユちゃん先輩とはまたちがう。
不良は不良でも、サイコパスのような。
その肝の据わった風格。
こうして見ると、あぁ、うん。
毒の色がお似合いだよ。
「そんなことより、魁運は? 会った?」
「そんなことって……。彼には一度も会っていませんが」
「そっか……そう、だよね……」
この1週間。
魁運はどうしていたんだろう。
突然あたしが帰ってこなくなって、ちょっとは心配してくれてる?
ぶしつけなことをしたこと、今も怒ってる?
もう体調はよくなったかな。
あたしのいない1週間を長く感じてくれたかな。
きらわれてない、かな……?
「あ、そういえば、これ」
「? ……そ、それ!」
「山で見つけたとき、手にしていた花です。勝手ながら、枯れる前にドライフラワーにさせていただきました」
受け取ったのは、手のひらサイズの小瓶。
せまいガラスの檻の中。
にぶく乾いた紅のしみた、白い花が咲く。
「ありがと……っ。助けてくれたこともだけど、この花も、ありがとう」
きれいなままのスイレン。
命からがら摘み取った、神様の花。