死んでもあなたに愛されたい
父さんの趣味に付き合ってられないし、貴重な青春を無駄づかいしたくもない。
がまんしてきた分、あたしはあたしを最大限に甘やかす。
あたしがしたいことをやっていく。
「父さんが謝るまで、あたしは帰らないよ」
「お嬢。組長は……」
「手、離して」
あたしの瞳が、藍色に浸る。
ざわりと冷風が立つ。
兵吾郎は腕を引っ張ろうとするが、1ミリも動かない。
力ませた右手首に熱がこもる。
離さないなら、あたしがつかみ返してやろうか。
兵吾郎のうでに、手が伸びた。
「おい。こいつに何してんだ」
魁運の、手が。
「ひとみ、大丈夫か?」
「魁運……!」
今は、あたしだけじゃない。
ここにも、味方がいてくれる。
「何があった」
「こ、このおじさんが急につかみかかってきて……怖かったよお~~!」
「ちょっ、お嬢!?」
「お嬢さんお嬢さんって詰め寄ってきたの。とんだロリコンだよお~~!」
「えええ!?」
「てめえ……!」
「ち、ちがっ! ご、ごご、誤解です!」
「この状況でしらばっくれる気か!?」
「本当にちがうんすよ!!!」
色素のうすい目がするどくなっていくにつれ、魁運の手の甲には血管が浮いてくる。
スーツ越しにギチギチと、兵吾郎の骨が軋んでいた。
ふん、いい気味だ。
そのままぽっきり折れてしまえばいい。
魁運、やってしまえ!!