死んでもあなたに愛されたい




――ミンミンミン……



たとえば。

今、唐突に、窓ガラスを割ったら。




――ミンミンミーン……



たとえば。

割ったガラスで、命からがら啼く蝉をぶっ刺したら。




まあ、まずは。

けっこうな騒ぎになる。確実に。
ここ学校だし、授業中だし。


隣人を愛せ、なんてキリストの教えを説くセンセーも、クラス1かわいいっていう隣の席のマドンナも、怖いくらい真っ青な顔して俺を見てくるんだろうな。

こいつやばい、って目で。


で、まんまとやばいヤツ認定されて、職員室行きがオチか?

保護者も呼ばれるかな。どうだろ。


それはいやだなあ。



でも、どうせ。



――ミンミン……



うっさい啼き声が消えたって、だあれも気にしないんだろ。

ちっせえ蝉一匹ごとき、どうだっていいんだ。


そういうもんだ。



どうせ、俺もそう。




――ミンミン…………。



それでも啼く、おまえはすげえな。



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