死んでもあなたに愛されたい




「白雪組を敵に回してもいいことはないと思うぞ」


「……し、しらゆき、ぐみ……?」




って、あの!?



神亀に入る前から、その名は知っていた。

ここらじゃ有名なヤクザだ。


この区域のどこかに拠点を構えているとはうわさされていたが……まさか、こいつらとは……。



ドクン、ドクンッ……!
心臓の奥で、鼓動の波が荒ぶり始める。



それじゃあ、ひとみは……。



いつもへらへらして、バカ正直で、人なつっこい。

そんな、あいつが……?


血の匂いの染みついた世界とつながりがあったとは、とうてい想像がつかない。




「手を引くなら今だ。今なら特別に目をつむってやろう」




足がすくむ。


男たちは少しずつ重圧感ある空気をかもし出している。

本職の殺気、ハンパじゃねぇ。



でも。


それでも、俺は……!




「……ほう? よほど戦いたいようだな?」


「っ、」


「白雪組を敵に回すなど、そんな自殺行為を誰が好き好んでしましょうか」


「親父……!」




内心すんげぇ臆している俺の隣に、親父がどんと立ちはだかった。

緊迫感が和らいでいく。


なんて頼もしい父親なんだろう。




「わたしたちは本当に何も知らないのです。どうぞお引き取りください」


「……親子ともに知らぬ存ぜぬをとおすか」


「命知らずな人たちですね」



< 67 / 329 >

この作品をシェア

pagetop