策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「日葵さん、兄さん、何度も電話してきてたみたいだけど今は繋がらないんだ。会社に戻ったあと、今は自分の車を運転中かもしれない」

焦って戻ってきた勇気と同時に、柊がスマホの充電器を咥えて戻ってきた。

「そう、ありがとう。私のスマホも充電切れてて繋がらないから、かなり怒ってるかもね」

「そうなの?じゃあ、兄さん、ものすごく心配してるよ。絶対怒ってはいないと思う」

勇気は柊から充電コードを受けとると延長用コンセントに差しこみ、日葵のスマホにもコードの反対側を差し込んだ。

スマホが立ちあがり機能するまでには少し時間がかかる。

スマホの電源を落としたまま日葵は立ち上り、

「勇気くん、重ね重ね、重ね重ね悪いんだけど、トイレに行ってもいいかな?一人だと不安だからついてきてもらえる?」

「もちろん!日葵さんをどこへだろうとエスコートするよ」

エスコート先がトイレでなければ胸キュンものなのだけど・・・と、日葵は苦笑した。

またしてもお腹が痛み始めた。

最早、便意に近い痛さだ。

あの下痢の時のような、冷や汗の出る嫌な感じだ。

「日葵さん、大丈夫?顔色悪いよ?」

「大丈夫。勇気くんが居てくれるから」

日葵がニッコリ笑うと、勇気がポッと頬を染めた。

「僕、ここで待ってるから、何かあったらすぐに呼んでね?鍵かけないでね?絶対だよ?」

耐え難い痛みを悟られまいと、日葵はゆっくりと微笑んで頷き、トイレのドアを閉めた。

「くっ・・・!」

下腹部に激痛が走る。

堪えようもない便意に似た何かが日葵を襲う。

力んだら何かが出てきそうな・・・。

そう、日葵が思った時だった。

「えっ?・・・嘘・・・」

パシャ・・・っと何かが弾ける音がしたと思ったら、透明な液体が股の間を濡らした。

それは破水。

お産が急速に進んでいることを意味していた。
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