海の向こうで




例えば一番分かりやすい例でいうと…かくれんぼした時、とか。



あの時密着してドキドキしてたのは、“男子だから”じゃなくて“飛鳥だから”だったんだ。



あとよく分からない族に攫われた時に真っ先に駆けつけてくれた。



あの時特にほっとしたのは、飛鳥だから…?



飛鳥が“大切な人を守りたいから暴走族に入ることにした”と言っていて、それが私じゃないかって期待しちゃったり、大事にしている女の人でもいたら嫌だって思ったのは…。



ぜんぶ、飛鳥のことが好きだったから…?



思えば、近くにヒントはたくさんあった。



「え、ちょっともう一回ちゃんと言わせて!」



と飛鳥が慌てて言った。



「俺は、海華のことが好きだ。付き合って欲しい」



飛鳥の真剣な表情にドキッとする。



好きなんだって分かったから、余計ドキドキ度が増してる気がする。



私は震える口を開いて、はっきりと告げた。



「私も好き。よろしくおねがいします」



そう言った後、ふたりで笑いあったのを私は今でも忘れない。



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