値札人間
☆☆☆

スイーツ屋さんはコッテリとした甘い香りが充満していた。


さっきまでこの臭いに惹かれていたのに、ゴウと一緒に店内に入ったときには吐き気を感じた。


注文できたのはアッサリしたレモンジュースだった。


「本当によかったのか?」


ゴウは運ばれてきたコーヒーに角砂糖を2つ入れてかき混ぜながら言った。


「言ったでしょう? あたしの友達は、あたしが決めるって」


あたしは本気でそう思っていた。


額に数値が見え始めた頃から、そうなるように努めてもいた。


今あたしの周りにいる友人たちはみんな数値が高く、人として価値のある子ばかりなのだ。


そんな子たちに囲まれているからこそ、あたしは成績が上がり、スポーツでも運動部の子たちと引けを取らないようになってきた。


なにも間違えたことなんてしていない。


それなのに、アマネに言われた『絶交』という言葉がずっと頭の奥で繰り返されていた。


「もうこの話は終わり。せっかくのデートなんだから楽しまないと!」


あたしは気を取り直すように、大きな声でそう言ったのだった。
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