不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
許婚がいるなんて聞いてません!


 少し甘い味付けの厚焼きたまごと、厚揚げと小松菜の煮物。

 昨日炊いておいたきのこの炊き込みご飯をおにぎりにして、ラップに包む。

 ふたつのお弁当箱にそれを詰めて、残った隙間にいちごとくし型に切ったマンダリンオレンジを添えた。


「よし……これでオッケーと」


 ふたを閉めたところで火にかけていたポットから湯気が上がり、用意しておいたマグカップにお湯を注ぐ。


「つぐみー、お母さんもう行くわね」


 リビングのダイニングテーブルについて淹れたばかりのカフェオレを飲んでいると、二階からとたとたと階段を下りてくる足音と共に母親の声が聞こえた。


「うん、お弁当できてるよ」

「ありがとう。もらっていくわね」

「今日は、お父さんのところ寄ってくるんだよね?」

「そうね、残業じゃなかったら寄ってくるわ。また連絡入れる」


 ランチバッグを掴み、そそくさと玄関へと向かっていった母親は「行ってきまーす」とあっという間に出かけていった。

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