戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
地味子の仮面が剥がれたとき


「今月より新たに加わった仲間の成長を願いまして…かんぱーい!!」

「「「かんぱーい」」」


話の長い課長の乾杯の音頭がようやく終わり、少し生ぬるくなったビールに口をつける。

今日は4月入社の新人を迎えて初めての歓迎会だ。


「佐藤主任、相変わらず良い飲みっぷりですね〜」


音頭をとって数秒でジョッキを空にした上司に、明るく声をかける。


「家じゃ嫁の小言が多くて自由に飲めねぇからな〜!北川も飲め飲め!」


ガハハっと、いかにもオヤジらしく豪快に笑っている佐藤主任に、愛想笑いでかわす。

社会人6年目ともなれば、ちょっとしたパワハラじみた発言もかわすことが容易にできるようになった。

佐藤主任、酒が好きなのは良いんだけど、酔いが回るのは早い方で、酔い潰れたら介抱するの大変なんだよな…。

毎年のように会社の宴会で、自由に飲めるからと自分の力量を考えずに酒を流し込み、若手の男性陣に介抱されている姿を見ているだけに、今回も…と佐藤主任のピッチの速さを見ながら嫌な予感がよぎった。

…これは、早めに手を打った方が良いかも。


「少しお手洗いに」


隣に座っていた同僚に小さく席を外すことを告げて、その場を離れた。


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