何にもない

君の過去


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あの日の君からの電話はいつもと違った。


『も、もしもし?』

「ん?なに?」

『あのさ…家、今から行って…いい?』

「…いいよ。おいで。」


声は小さくて、くもってて、震えてた。


「いらっしゃい。」

『ごめんね。こんな時間に。』


時計は午前2時をさそうとしていた。


「いいよ。ひとまず上がりな。」

『お邪魔します。』


ソファに座った君に
君が好きなココアを入れてあげる。


『ありがとう。』

「どういたしまして。」


隣に座った時にわざと距離を開けたのは
僕が弱いから。ただそれだけ。



「で、どうしたの??」

『…えっ?』

「幼なじみが顔に泣き跡作ってるのにほっとけるわけないじゃん。」

『……何でもお見通しなんだね。』

「当たり前じゃん。」

『あのね、彼氏と…別れたの。』

「…そっか。」

『もう私の事好きじゃないんだって。』

「そっか。」

『何が悪かったのかな?』

「…僕にはわかんないよ。」


僕には君の良さしか分からないんだ。


また頬を濡らす君。
泣くのが嫌いな君を泣かせたその人は
どんな奴なんだ。



「僕、違う部屋にいるから落ち着いたら呼んで?」

『待って……。ここに…いて欲しい。』


僕のTシャツを掴んだ君は
目が真っ赤だった。


「うん、わかった。」






次の日から君の口癖は

『またいい人見つければいっか。』

になったよね。



それから1年たった今でも
恋人をつくらないのは
まだその人のことを好きだからじゃないの?






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