ねぇ、好き。

「あれ? 今日は『こないでください。』って言わないんだねって……いう、絡みも、迷惑なんだよね。ごめんね。」

『迷惑』

自分が一番最初に言い出した言葉だ。

思い出してみれば、私が『迷惑』と言うたびに傷ついたような顔してた気がする……。

「諦めるって言ったもんね。ごめんね、じゃあ、迷惑者は、去ります。」

え? 行っちゃうの…?

なんて、言葉にできるはずもなく。

「はい、去れ去れ〜っ」

と、思ってもいないことを笑顔で言ってしまった。

彼が向こうへ行ってしまった瞬間。

…あれ。

なんでだろ。

どこも痛くないのに、涙が出るなんて。

ポロポロととめどなく流れる涙を拭うと、私はやっと自分の気持ちに気づいた。

ああ、好きだったんだ、私。

いつからかはわからないけど、駅でチャラ男に絡まれた時にはもう、好きだった。

なんで気づかなかったんだろう。

こんなにわかりやすかったのに。

アゲちゃん以外の誰に対しても興味がなくて、適当に過ごしてた私が、こんなふうになるまで気づかなかったなんて、信じられない話だよ。

——ねぇ、好き。

私を好きになって。

こんな適当星人の私の中に、こんなに強い気持ちがあるなんて、私はこの恋に気づくまで、知らなかったんだ———。

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