ねぇ、好き。
***

駅で。

あなたの姿を探す。

いない。いない。ここにもいない。

考えてみれば、私がアゲちゃん以外の人を探すなんて、天地がひっくり返ってもありえない話だ。

その、“ありえない”を、ありえさせてしまったのがあいつ。橋田洋介。

ほぼ名前しか知らない。

私はあいつがこの駅にこの時間によく来るってことと、名前と、学校が同じってことしか知らない。

「…いた………。」

私の姿に気づくなり、彼は寄って来た。

「ここにいるなんて珍しいね。おはよう。」

「おはよう。」

「おはようって返してくれるようになっただけでも嬉しいよ。この初恋は俺の中にしまっておく。迷惑者は、大人しくするよ。彼氏がいるなら、もう話しかけない。」

え……。

「じゃあね。今まで迷惑かけてごめんね。あ、電車の時間もずらすよ。学校でも話しかけないようにする。…あ、君が望むなら、休み時間中ずっとトイレにこもっとくよ。」

「ねぇ…っ。」

「あーっ、こんな長く話してると彼氏に誤解される? ごめん、もうしない。もう話しかけないから。」

そんな……。

もう会えなくなるじゃん。

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