異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
現世:空回りな日々
「はあ……朝か……」

重たい目蓋をなんとか開けて、体を起こす。心は後ろ向きになっていても、体はいつもの習慣をこなしていく。顔を洗って、着替えて、食べて……





「おはようございます」

職場である、桜山総合病院に足を踏み入れる。顔を合わせた職員に挨拶をしても、返してくれない人もいる。

「来た。あの図々しい女。まだ辞めてないのね」

「本当。いつまで居座るつもりかしら」

そんな悪口が聞こえてくる。まあ、聞かせてるんだろうな。

私、井川悠里はこの病院で管理栄養士として働いている。大学を卒業してこの病院に就職して3年目に入ったところ。勤めはじめこそ、順調だったと思う。それが今、24歳にして大きな挫折を味わっている。
いや、こんなの挫折じゃない。だって、私には落ち度がないんだから……




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