異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「これか」

遡ること100年ほど前。アシュリー王の時代にその記述はあった。ざっと目を通すが、それほど詳しいことは書かれていない。だからこそ、事実だとは思えなかったのだ。

約100年前、同じように領地内に少女が倒れているのが発見された。王家はその者を保護したという。ここまでは今回と同じだ。その後、その者のもたらした知識のおかげで、国は繁栄したとある。他の文と比べると、いささか簡潔で、意図的に隠しているのではと勘繰ってしまうほど、異世界から来た者に関する内容だけは詳細に欠けていた。

「これでは何もわからない」


異世界から来た……
にわかに信じ難いが、こういう記述が残っている以上、必ずしも否定できない。

「もうしばらく様子を見て、見極めるか」

近いうちに、ユーリとやらに面談する必要がありそうだ。わかってはいるが、無意識のうちに顔をしかめてしまう。

女か……
女が関わると、ろくなことがない。



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