愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「私も傑の初恋の女性に会えて嬉しい」

茶化したつもりはないけれど、傑が眉をひそめている。

「咲花、余計なことを言うな」
「あら、初恋でしょう。自分から好きになったんだものね。よかったね。初恋が実って」

傑の横で、なお真っ赤になった里乃子さんがぼそりと呟く。

「私も、傑さんが初恋なんです」

あらら、そうなんだ。精神的な初恋同士のカップルなんて素敵だ。

「咲花も初恋が実ったことになるな。おめでとう」

到着したワインで乾杯をする。私と傑の画策した未来に、はからずもたどり着けたことになる。これは乾杯しなければならないよね。
グラスを合わせ、ひと口含んでから答える。

「佑はきっと責任感で私といるだけだと思うけどね」
「俺が咲花を振ったから?」

傑がさらっというので訂正する。

「私から婚約を破棄してあげたんでしょう?」
「ハイ、そうでした。すみません」

素直に頭を下げる傑によろしいと頷き、続ける。

「ともかく佑は、私を幸せにする義務があるから、陸斗建設の社長夫人の座につけてくれようとしてるんじゃないかしら」
「そうか?どっちかと言うと、兄貴の方が負い目を感じてそうだぞ。兄堅物なところがあるから、婚約者と駄目になった自分自身を反省してるだろうし、そんな自分と結婚させてしまうことを申し訳なく思ってるだろ」

傑がスラスラ分析する。なるほど、さすが兄弟。よくわかってるわ。
< 39 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop