羽を失くした天使 ~祐一の場合

千佳と名乗った その子は 深刻な顔で言う。

麻里絵のことって言われたら 俺は 断れない。

しかも 今日は 麻里絵もいないし。

「いいよ。どこで話す?」


俺は 千佳と並んで 歩き出す。


駅に向かって 歩きながら 店を探して。

遅くまで バイトに入っていたから。

居酒屋くらいしか 開いていなくて。


「落ち着かないけど。ここでいい?」

頷く 千佳を伴って 俺は 居酒屋に入る。


俺が 中ジョッキを頼んだら 千佳も

「同じで。」と言った。


俺は バイトで 賄いを食べていたから。

お腹は 空いていなかったし。


だいたい 千佳と 楽しく飲む気もない。

簡単な おつまみを 少しだけ頼んで。


「で。麻里絵のことって なに?」

黙ったままの 千佳に 俺は聞いた。






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