羽を失くした天使 ~祐一の場合

ずっと 俺の部屋に 居続ける千佳。

俺は 千佳を 拒否する気力さえ なかった。


千佳は 甲斐甲斐しく 俺の世話をやいたけど。

俺から 千佳に 話し掛けることはなく

千佳の顔さえ 俺は まともに見なかった。


麻里絵は 家族と賑やかに 過ごしているのか。

何も 連絡がないことが 救いだった。


もし 麻里絵から 連絡があっても

俺は 一言も 麻里絵に 返す言葉がないから。


そのまま バイトは 休み続け

俺は 部屋から 一歩も出なかった。


俺が ベッドに 横たわっていると

千佳は 俺に 身を寄せて来る。

理性も 感情も 失くした俺は

ただ 獣のように 千佳を抱いた。


『明日 帰るね。時間が わかったら 連絡します』

麻里絵からの ラインを見たとき

俺は 喪失感に 打ちのめされて。


声を上げて 泣きながら ウイスキーを煽った。


「祐一君。どうしたの?大丈夫?」

俺を 抱き締める千佳を 

乱暴に 押し倒し 抱いて。


その後 何度も トイレで吐いた。


俺の吐き気は ウイスキーでも 千佳でもなく

下衆な自分への 嫌悪だったのだと思う。




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