羽を失くした天使 ~祐一の場合

「あの大きな家に 社長と2人で 住んでいるの?」

俺が聞くと 一瞬 瑞希ちゃんは 寂しそうな目をした。

「母は 事務所にいることが 多いから ほとんど 1人です。」

「怖くない?」

「怖い?怖くは ないけど。小さい頃は 寂しかったなぁ。もう慣れたけど。今は 快適です。逆に。」

さっきの 寂しそうな目は 消えて 明るく言う 瑞希ちゃん。


チラッと 表情を窺がいながら。

俺は 少し 動揺していた。


瑞希ちゃんの 寂しそうな目を

愛おしく 感じてしまったから。


さっき あんな話しを したからだ…


あの頃の 麻里絵と 同じ年頃の 瑞希ちゃん。


麻里絵とは 全く 違うタイプだけど。


弾けるような 若さとか。

若さ特有の もどかしさとか。

もう 俺は 失くしてしまったけど。


「瑞希ちゃん。今度 美味しい物 食べに行こうか?」

「進藤さん。私を 誘惑しているの?」

「社長には 内緒だよ。出入り禁止に なっちゃうから。」

俺は 笑いながら 瑞希ちゃんに言う。


「ねぇ。これから ドライブしない?それで 夕ご飯 ご馳走して。」

「えっ?だって 友達の家に 行くんじゃないの?」

「ううん。退屈だったから。少し ブラブラしようと 思っていたの。」

「そうなの?じゃ どっか行こうか?」

突然 舞い降りた天使に 俺は 振り回されていた。







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