電話のあなたは存じておりません!
 誰とでもフレンドリーであろうとする、あの頃のおバカ女子を思い出した。

「こんな私は、イタイですか?」

『え?』

「イタイ女、ですか?」

『あ、いえ! そういう意味じゃないです』

 ーーじゃあどういう意味だろう?

『平和主義、なんですよね? あなたは。
 みんなと仲良くありたい、そんな芹澤さんは魅力的だと思ってましたよ?』

 ーー何なんだろう、これは。

 胸の内の何処かがくすぐったい。

 クルスさんの台詞は純粋な言葉なのか、単なる口説き文句なのか。

 前者であって欲しいと思うけれど、ハッキリと確かめる事など出来ない。

「クルスさんは高二の私を知ってるんですよね? 先生ですか? それとも先輩ですか?」

『そうですね……たった半月のキミしか知らないですが、知ってます。
 あの時の芹澤さんは男の子にモテてましたし、それが悩みの種でしたよね?』

 ーーそんな事までどうして……。

『僕は先生でも先輩でも無いです。でも、あの時の芹澤さんに悩みを相談されて、プライベートな話もしました。
 僕は教師になりたかったんですけどね……生憎事情があって、今は別の職種に就いてます』


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