続・電話のあなたは存じておりません!
 元来、イケメン過ぎる人には人一倍警戒心を働かせていた私だが、彼だけは特別だった。

 私の過去の傷と今のそれを知る彼には、いとも容易く心を許していた。

「うわぁ〜、綺麗……っ」

 何度目かのデート中。二人で夜景を見に出かけた時の事だ。

 夜景スポットと謳われる山頂まで彼が車を走らせ、二人でその景色を目の当たりにした。

 景観ポイントである崖の淵には白い柵が建てられていて、私はその柵に手を付いてまばゆい景色にうっとりと見惚れていた。

 ふと気付くと彼の両手が私を後ろから覆うようにして、柵を握っていた。

「綺麗だね?」

 彼が話すたび、耳元に吐息を感じて心拍が早くなる。

 背中に彼の体温が伝わって若干恥ずかしくなる。

 振り返って目を合わせれば、きっとキスをされる。

 そんな想像が容易にできたからこそ、私は意識し過ぎて振り返れなかった。

「芹澤さん?」

 来栖さんは、いつでも楽しそうに私の顔を覗き込んでくる。

 穏やかにフッと笑うだけの時もあれば、時折真剣な眼差しを向けられて、顎をクイっと持ち上げられる。

 ひとたび彼のキスを受けると、私の全身は火照り、高鳴る鼓動を制御出来なくなる。

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