君はロックなんか聴かない
敵意ではない。もちろん嫌いなことは無い。でも勝手なライバル心があった。それは今日になっても消えることは無かった。でもダメだちゃんと直接感想を伝えないといけない。感動したのは事実だ。昼休みに伝えよう。

今日の授業は完全に上の空だった。何度も何度も声をかける練習をしていた。何度も何度も。かっこ良かったよ感動したよって、ちゃんと伝えよう。自分の髪を撫でる。

何度もチャンスはあったが昼休みになってしまった。はあ、自分の意気地なしにため息が出る。ここまで小心者だとは自分でも思わなかった。私たちは席を囲んで弁当を食べる。

「どうしたの?」

「ううんなでも無い」

「久間君?」えみちゃんのカンは凄かった。

「う、うん」

「言ってきなよ」

「うん、言ってくる」私は勢いよく席を立ち上がる。私の中で何かが吹っ切れた。教室を出て、久間君を探しに行く。多分学食だろう。「かっこ良かった、感動した」そう伝える。歩く速度は上がる。

いた。久間君の姿。

「あの」久間君が顔を上げる。同時に久間君の前座っていた女子高生も振り返る。萌え袖の女、白石さんだ。

「え、あ、あの」私は言葉を失った。

「橋本さんどうしたの?」

「次は、次は勝から!」

久間君はキョトンとしていた。白石さんも、私は慌てて教室に戻った。
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