魔女の紅茶
特別を写す瞳

 己の身に起きた事を理解するのに、そう時間はかからなかった。薄暗い部屋の中、閉ざされた棺と開かれた棺。直前の記憶は「魔女様に関する情報があるの」と言って森の中へこの俺を呼び出したあの女が唱えた不可解な言語。
 魔女。ああ確かに、魔女が関与してるよなァ。あのクソ(アマ)、一度寝たからって恋人ヅラしやがって、挙げ句、意味の分からねぇ呪いなんぞかけやがった。絶対ぇ許さねぇ。と言いたいところだがまぁ今回は見逃してやらンでもない。何故かって?ンなもん、魔女の呪いの渦中にいるからに決まってンだろうがよ。
 ずっと、ずっと、探してた魔女。情報があると言われればどんなに高額だろうと言い値を払った。身体で払えと言われれば当然、身体で払った。そうして手に入れた魔女の資料を読みあさり、時にはその地方にしか伝わらない伝承を聞いて、いくらか魔女について詳しくなった頃に突然舞い降りたこれをチャンスと呼ばずして何と呼ぶのか。魔女による契約にも呪いにも、それ相応の知識を持っている自負はある。手始めに現状を知れるもの、新聞だとかテレビだとかを願えば、当たり前のように目の前に現れた。だよな、だよなァと二十年くらいは費やす覚悟でいた俺は、どうやら神様とやらに割りと好かれているらしい。

「……契約成立ね」

 まぁ、神様なんてもんはこれっぽっちも信じちゃいねぇンだけどな。
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