反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~
「違います。死んだらダメなんです。死んでしまったら意味がないんです。死なずに守らないとダメですっ」
 あははと、リュートさんの小さな声が聞こえる。
「賢者さんはどう思います?勝てると思います?」
 ちょうど亡くなった父と同じくらいの初老の男性。
 眉間のしわよりも、目じりの笑い皺が濃い。優しい人だと、それで思った。
「鬼切刀が出せない勇者と、私の二人ではむつかしかっただろうが、鬼切刀が出せる勇者と私の二人であれば……可能性が全くないわけではないと思う」
 だけれど、可能性は低いと言いたいのだろう。
「じゃあ、そこに……回復魔法も治癒魔法も使えない、中途半端な反逆の聖女が加わったら?」
 賢者さんが何もかも理解した顔で私を見る。
「反逆の聖女?」
 リュートさんが賢者に視線を向ける。
「日本に、帰れるかもしれませんね」
 ん?
「3人であれば、鬼を倒して日本に帰れるかもしれない……」
 え?まさか、倒せば日本に戻れるっていう……こと?あ、あれ?私、むしろ、日本に帰る遠回りをしようとしてた?
「さ、3人って?え?俺と、え?頼子……もしかして」
「リュートさんが勇者だったなんてね。……帰れなかったら、ヨリトは勇者と聖女に育てられた子供ってことになるのかなあ」
 くすくすと笑う。
「頼子が、聖女……」
「残念ながら、ステータスは反逆の聖女です」
 でも……。
 聖女に課せられた鬼退治の使命を果たすために動こうと思う。
 私の意思とは関係なく召喚されたけど。
 あの王たちには腹が立つけれど。
 私にしかできないことがあって、誰かを笑顔にできて、誰かを幸せにできて……。
 それが、私も幸せなんだから。ねぇ、聖女になってみるのも悪くないかもしれない。

 
 





 
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