お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「夏美ちゃんどうぞ、一服して」
「あー、喉カラカラだったんです。ありがとうございます!」
そう言って冷たい麦茶を出してくれるのは、先ほど声をかけてくれた乾さんだ。この春一番下の息子さんが大学を卒業し、子どもに手がかからなくなったそうで、大好きな宝塚の舞台に通い詰めている。熱中できるものがあって、心底羨ましい。
「夏美ちゃんの好きな永寿萬栄堂の水まんじゅうもあるよ。一緒に食べないかい?」
「わあ、篠田さんありがとうございます!」
ぷるぷるの水まんじゅうを趣のある葉っぱ型の皿に載せて手渡してくれたのは、最年長の篠田さん。今年定年を控えている。甘いものが大好きで、特に和菓子に精通している。私も無類の和菓子好きだから、篠田さんとは一番話が合う。
この二人の他に、今は席を外している添島係長とパート社員の水野さんを入れて総勢5名が庶務係 のメンバーだ。