蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
ため息が零れ落ちそうになるのをなんとか堪えつつ、蓮人兄さまのお家にも申し訳なさが募る。
しかし、昔から我が道を行くお母さんのことを、蓮人兄さまのお母様はよくご存じだ。
もうここはお付き合い頂くほかないだろう。
そう思いながら私はどこか他人事のように話を聞いていた。
「お夕食の支度させましょうね」
「申し訳ありません。それはまた後日に」
お母さんのセリフに今まで、NOと言わなかった蓮人兄さまが初めて断りの言葉を述べた。
「あら、そうなの」
「はい、このまま役所に寄りたいので」
そう言うと、いつのまにか用意していただろう蓮人兄さまは婚姻届けを差し出す。
そこには蓮人兄さまの記入とお父様の署名がすでにしてあり、私はその事実に驚いていしまう。
「いつのまに」
つい言葉がもれた私に、蓮人兄さまは「朝もらってきた」それだけを端的に述べる。
「そういうことなら急がないとね」
そう言うと、そそくさとお母さんはお父さんを連れて居間へと行ってしまった。