寂しい姫と不器用王子
「飯作るけど、何がいい?」
「えっと…」
「何がいい?って言われても困るか。人の手料理苦手?」
「それは大丈夫です」
「何が好き?」
「…ふわふわの、オムライス」
「ん、了解」
いちいち、ふわふわのって言うあたり、少し可愛いなと思ってしまった。
ちょっと頑張りますか!
自分で言うのもなんだが、料理は得意な方である。姉2人からしつこく教えられたから。
…っと!完成!!
ちゃちゃっと2人分作り、ダイニングテーブルに持って行く。
「ほら、食うぞ」
「…いただきます」
健気に手を合わせて、一口頬張る。
すると、目をキラキラさせる。
「美味しい?」
そう聞くと、上目遣いでコクコク頷く。
「誰も取らねーから、ゆっくり食えよ」
無邪気に美味しそうに食べる姿が、可愛らしく映った。俺はつい微笑んでしまった。
口元に、ケチャップがつく。
「付いてるぞ」
指で口元を拭って、なんの気なしにペロリと舐める。
彼女は顔を赤らめた。
ん?
「姫莉だっけ、高校はどこ?」
「西高です」
「ああ、同じなのか」
ひとつの高校の寮ではなく、複数の高校の寮である。
「学校では話しかけない方がいい?」
何気ない質問だったが、彼女のスプーンの手がゆっくり止まった。
「なるべく…そうしてもらえると…」
お茶を一口飲んで、また食べ始める。
またひとつ彼女に影が落ちた。