わたしにしか見えない君に、恋をした。
「ていうか、明子からって意外じゃない?」

「!!そういうタイプに見えないのに」

「あの子ってさ、おとなしそうに見えて案外男大好きそうじゃない?」

「そうそう。ああいう子に限って、男好きだよね」

「わかる~!!」

「純粋そうに見えて裏でなにやってるかわかんない子っているよね」

自分で見たことではないのに、それらしく話すサエコ。

聞いた話って言ってるけど、噂の出所はいったい誰なのよ。

きっとサエコに尋ねても、のらりくらりと理由をつけてごまかすだろう。

周りのみんなだって噂の出所になんて興味はない。

ただ、誰かの噂話が聞きたいだけでしょ、と心の中で毒を吐きながらもあたしは嫌々サエコの話に耳を傾ける。

本当は噂話をするのも悪口を聞くのも、もちろん言うのもいや。

だけど、サエコの悪口の対象が自分になることはもっといや。

マジであたし、最低最悪のクソ野郎だ。

その時、噂の主の明子が教室に戻ってきた。

「じゃ、話はまたあとでね」

「了解~!」

サエコの一言でサーッと散らばっていくクラスメイト達。

何気なく顔を持ち上げた時。明子と目があってドキリとした。
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