わたしにしか見えない君に、恋をした。
「だって、姿は見えないけどあたしに触れる手は温かいし……。なんか不思議だなって。顔だって死んだら血の気がなくなるはずなのに湊の顔は普通だよ?」

「つーかさ、俺、どんな顔?」

「へ?」

「鏡に映んないから自分の顔が分からない」

「あぁ、そういうこと」

「俺、どんな顔してんの?」

どんな顔って言われたら、たった一言で済ませる自信がある。

イケメン。悔しいけれど、その4文字がすべてだ。

「カッコいい、って女の子は思う顔してる」

「なんだそれ」

「目は奥二重で切れ長。鼻筋は通ってて、唇は薄いかな。肌は日焼けしてる。髪の毛の色は黒」

あたしの言葉に湊はほんの少し考えたあと、

「全然分かんないけど、流奈的にはあり?なし?」

湊は淡々とそう尋ねた。

「えっ!?」

ありかなしでいったら、あり。でも、悔しいからそんなこと口が裂けても言わない。

「ナイショ」

「なんだよ、ケチ」

湊はそう言うと、隣で大きく伸びをした。

「俺、どうなってんのかな。生きてんのか死んでんのかも、どうして流奈にだけ触れられるのかもわかんねぇし」

「うん」

「俺に見覚えない?昔、俺と付き合ってたとか」

「ない」

「じゃあ、血の繋がってない腹違いの兄妹とか」

「ないない。そもそも顔が似てないし」

「俺と流奈に何かの接点があるのは間違いないと思ったんだけどな」

「あたしが思いつく限りでは、あたし達に接点はなさそうだよ。ごめんね、湊。なんの役にも立てなくて……」

がっかりする湊に申し訳ない気持ちになる。

もともとあたしには霊感もないし、湊以外の幽霊を見たこともない。

どうしてあたしにだけ湊の姿が見えるのか、思い当たる点が一つもなかった。

「いや、謝んなって。流奈が悪いわけじゃないし。つーか、今から暇?」

「うん」

「じゃあ、ちょっと付き合ってくんない?」

「いいよ」

あたしは湊のお願いに快く頷いた。
< 41 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop