わたしにしか見えない君に、恋をした。
もう興味が別のところにいったのか、ベッドに寝そべって天井を見上げる湊。

この部屋に湊がいるのが当たり前で、湊がいない生活なんてもう考えられない。

手を伸ばせば触れられる場所にいる湊。

だけど、あたしは手を伸ばせない。

手を伸ばしたところで何かが変わるわけじゃない。

胸が苦しい。この気持ちの正体が何かもう分かってる。

だからこそ気持ちにふたを閉め鍵をかける。

今ならまだ間に合う。

こんなこと考えてはいけないと自分を戒める。口に出すこともできない。

そんなこと言われても湊を困らせるだけ。

ひっそりと胸の中にこの想いは秘めておく。それが今、あたしにできること。

あたしはぐっと自分の気持ちを抑え込んだ。

< 53 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop