わたしにしか見えない君に、恋をした。
あたしがどこに行きたいか聞くことは一切しない。

ただあたしは先輩の後をついて回っていた。

「なんか疲れたね。どっかで休憩する?」

しばらくすると先輩がそう切り出してきた。

確かにずっと歩き回っていたせいで疲れがたまっていた。

どこかのお店に入って休憩したい。

「そうですね……。あっ、じゃああのお店にしませんか?」

すぐそばにあったカフェを指差す。

最近新しくできたカフェで飲み物だけでなく美味しい焼き菓子もあると友達が話していた。

「あそこ?あそこって女向けの店じゃない?」

先輩の表情がみるみるうちに曇る。

「いえ、あそこは男の人もいますよ?この間はサラリーマンの男の人が一人で……――」

「俺、ああいう店嫌いなんだよね。ていうか、休憩ならあそこでよくない?」

先輩が指差した先にあったのは有名なファストフードのお店だった。

「あそこならしばらくいられるし。ねっ、あっちにしよ」

先輩はニコッと笑うとそのまま自分が指差した方向へ歩き出す。

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