わたしにしか見えない君に、恋をした。
家に着くまでの間、湊は一言も口を聞こうとしなかった。
重たい沈黙が続く。
部屋の中に入ると、湊は振り返ってあたしをまっすぐ見つめた。
「流奈、お前なんですぐに逃げなかったんだよ」
その声には怒りが含まれていた。
「だってプリクラがまだ出てきてなかったんだもん」
「あんなのより自分の身を守ることのほうが優先だろ!?」
「でも、あたしにはプリクラが大事だったの!!」
湊はまっすぐあたしを見つめた。
その目は怒っているようにも悲しんでいるようにも……たくさんの湊の苦悩がごちゃまぜになっているように思えた。
「頼むから……無茶すんなって」
湊の顔がゆがむ。その表情に胸が締め付けられる。