わたしにしか見えない君に、恋をした。
「あれっ、流奈ちゃん。サエコちゃんとナナちゃんと3人で出ないの?」

「あっ……、うん。ちょっとね」

クラスメイトにそう問われて訳のわからない返答をしてぎこちない笑顔を浮かべる。

頬が引きつって目の下が震える。

とその時、向かい合わせにいた明子と目があった。

明子は心配そうな表情であたしを見つめる。

あたしは慌てて明子から視線を外した。

でも、正面からいまだに明子からの視線を感じる。

ギュッと目をつぶる。

あたしは明子に心配してもらえるような人間じゃない。

サエコやナナと一緒になって明子を傷付けた。

その事実に変わりはない。

自分がサエコとナナにハメられて弱っているときにだけ明子を頼るなんて都合が良すぎる。

「じゃあ、じゃんけんに勝った人はここに残ってください」

委員長の誘導でじゃんけんが行われる。

嫌だな。じゃんけんって昔から苦手。

勝ちたいと願えば願うほど大体負けに終わる。

「うそ……」

そんな不安が的中したのか、あたしは一回目で負け肩を落として自分の席に戻った。

すると、サエコが後ろを振り向きパチンっとあたしに手を合わせた。
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