その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



翌朝、パソコンを睨みながら作業をしていると、キーボードの上にパサリと資料の束が降ってきた。


「それ。確認、お願いします」

それが広沢くんの声だと気付いて顔を上げる。

けれどそのときにはもう、彼は私に背を向けて立ち去ろうとしていた。

いつもなら、必要以上にムダに絡んでいくくせに。

昨日のことがあるせいか、まともに目も合わせずに冷たく離れていく広沢くんの態度にムッとした。

私たちの状況は関係なく、その態度は部下としてもどうかと思う。


「広沢くん、その態度はちょっとどうかと思うけど。確認してもらう資料なら、せめてちゃんと手渡して」

引き止めて低い声で注意したら、周囲が少し騒ついた。

元々広沢くんは、どんな仕事も比較的卒なくこなしてうまくやる。

そんな彼が、私から厳しい声をかけられるのが珍しいからだ。

周りの空気もあって、立ち止まって振り向いた広沢くんがため息を吐く。

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