その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―

「広沢く、ん……」

耐え兼ねた私が目を開けて睨みあげると、ふっと余裕げに笑った広沢くんが、唇に甘いキスを落とした。


「ムダですよ。俺の下にいるときのれーこさん、エロくてかわいーだけで、全然怖くないんで」

生意気にもそう言って、今度はさっきよりも深く熱いキスをする。

広沢くんの首に縋るように腕を回した私は、悔しいけれど８つも年下の彼に抗うことができなかった。


「広、沢くん……」

息ができなくなりそうなキスの合間に名前を呼ぶと、彼が複雑そうな目で私を見下ろす。


「れーこさん、俺の名前知ってますよね？」

「広沢くんでしょ？」

「違いますよ、下の名前」

「何だっけ」

ちょっと不貞腐れたような広沢くんの顔が可愛くて、つい揶揄うように笑ったら、彼が私を責めたてるみたいに押し入ってきた。

途端に余裕を失った私の耳元で、広沢くんが低くささやく。


「れーこさん、ちゃんと呼んで？」