その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「この前、広沢くんの営業に新城さんを同行させたじゃないですか?あれから新城さん、広沢くんのことが気に入っちゃったみたいです」

「そう……」

新城さんの日報に視線を落としながら話す、秦野さんの言葉にはトゲがある。

新城さんが広沢くんを「気に入ってる」というのは、先輩としてとかそういうことではなく、恋愛対象として、ということなんだろう。

私も、新城さんがやたらと広沢くんのそばを彷徨(うろつ)いていることには気が付いていた。

広沢くんの前でだけ、女の子特有の媚を売るような話し方をする新城さん。彼女が、純粋に業務に関する指導だけを広沢くんに求めているわけではないことは明らかだ。

秦野さんは、新城さんのそういうところもよく思っていないのだろう。


「確氷さん、私は教育担当としては頼りないですか?」

日報を見つめていた秦野さんが、不意に顔をあげる。

ミスや自分にできないことがあると、いつも大きな目に涙を浮かべて、困ったように爪先を擦るばかりだった秦野さん。そんな彼女が真剣な表情で私を見つめてきたからドキリとした。

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