その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
足を止めて振り向くと、純粋そうな無垢な瞳と目が合う。
「ダメなわけではないけど……私が広沢くんの将来の邪魔にならないようにしたいな、とは思ってる」
桐谷くんに笑いかけながら口にした言葉は、広沢くんにはまだうまく伝えきれていない本音だ。
うちの会社ではこれまで、社内恋愛を公にしていた人たちもいるし、それで結婚した人もいれば、結果的に別れた人もいる。
広沢くんとの関係を社内で知られないよう気を付けているのは、もしこの先彼と離れるようなことがあったときに、彼の将来の障壁にだけはなりたくないからだ。
私は別に、生きていけるだけの稼ぎがあればどうなったっていいけど。まだ若い広沢くんの可能性が、私のために潰れないようにはしてあげたい。
それは、彼が今の会社に居続けるとしても、数年後に別の場所で活躍するとしても、だ。
広沢くんとはできれば長く一緒にいたいし、離れたくないけど。