復讐の華

「俺ら、あんまり上手くいってなくて。飛鳥の気持ちが離れていってるのを感じてた。正直、浮気してると思ってたんだ」


やけに落ち着いた声で言われるそれが、むしろ脆く聞こえた。


「だから俺は簡単に飛鳥を突き放した」


顔を上げて月を見つめる彼の目が光って、儚いその様子に呑み込まれそうだった。


彼は悔いていた。自分の無力さに、愚かさに。


星を見つめる彼が危うかった。己の身も、燃やすことを望んでいるようで。


隣に立つ彼を見る自分の気持ちが1番分からなかった。


苦しい。胸が鎖で縛り付けられるように、痛む。


勝手に目頭が熱くなって、溢れてくる思いが余計に自分を混乱させた。


無性に今、彼を抱き締めたい。


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