可愛らしさの欠片もない

……そう言われると…。直ぐ返事が出来ないことをよく解ってこの人は言ってる。私の気持ち、伝えたばかりの気持ち。試されてる。簡単に消えるのかって。止められるのかって。
つき合わない。間違ってはいない。真っ当な、正しい判断だと思う。…でも……そうなると…。

「いつになるか解らない離婚話なんかに振り回されて、永遠、待ってなんかいられない。全く関わりも持たずなら、そんなに気持ちが続くかどうかも解らない。ってとこだろ?」

…揺れている。その通りだ。結婚していることも本当。そして離婚できた、となったとき、…。このまま…、この人が言うように、私の気持ちはそれまでに切れてしまうだろう。そんな気がする。
…だって、…物凄く忘れられない人になってる訳じゃない。男女の繋がりはない。深いつき合いではない。綺麗な、純粋な思いだけで連絡も取らず満足して待っていられるものだろうか。私が、それが出来る人間なのかってことだ。……駄目だ。きっと薄れて、なくて良かったことになってしまう。だから、それでいいのかってことだ。

「俺は、今の立場を棚にあげても、このまま、はいさようならにはしたくなくなったんだ」

「え?」

「興味だ。興味があるんだよ、咲来さんに。きっかけは咲来さんが作ってくれたとしても、最初こそぎこちなくても、言いたいことを言い合って、遠慮なく腹の中を見せて。そんなことをしているのが楽しくてしようがない。それだけかもしれない。それがどうしたと言えば確かな物はない。連絡先を教え合わなければこれっきりになってしまう関係だ。もしかしたら、根本的に性格も合わないのかもしれない。言い合ってるんだから。解らないといえば解らないことだらけなんだ。
これっきりにしたら俺も気持ちは、時々気になる程度、それから忘れてしまうってなるだろう。咲来さんのことばかり、考えていられないからね」
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