きみと秘密を作る夜

交錯



しかし、事件は起きた。

9月も終わりに差しかかったある日の夜に、あさひから泣きながら電話かかかってきた。


電話越しでは話の内容が掴めず、とにかく今どこにいるのかと聞くと、あさひはしゃくり上げながら「街」とだけ答えたので、私は慌てて家を飛び出した。



「リナぁ……」


駅前の待ち合わせスポットで、うづくまっていたあさひは、私を見付けるなり飛び付いてきて、子供みたいにわんわんと声を上げて泣き出した。


土曜日の夜のその場所は、カップルだらけ。

奇異の目で見てくる人たちに頭を下げながら、私はどうにかあさひを物陰まで連れて行く。



コンビニで飲み物を買い、少しだけ落ち着いたあさひに手渡しながら聞いた。



「何があったのよ?」


尋常ではない状況だ。

あさひは肩で息をしながらも、どうにか言葉を手繰り寄せた。



「カレシが……」


そこまで言ったあさひは、また思い出したようにわんわんと泣き始めた。
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