きみと秘密を作る夜
「リナがそういうの嫌いだってのはわかってるよ? 無理強いするつもりもない。でもさ、何回もすれば慣れるっつーか、あんまり断られると俺のこと拒否られてるみたいで傷つくし」

「………」

「いや、リナへの気持ちは変わんないよ。けど、俺だって不安はあるし、リナのこと好きだからこそ常に抱きたいっつーか」


遼との行為を思い出し、ぞわりと鳥肌が立った。

私だって遼のことはちゃんと好きなのに、なのにどうしてももう一度、セックスする気にはなれない。



「ごめん。これからおばあちゃんとドーナツ食べるの。それに、今日は私が晩ご飯作る日だから、あとで買い物も行かなきゃいけないし」


私の言葉に、しかし遼は「は?」と声を出す。



「それってそんなに大事なことなの?」

「え……」

「おばあちゃんとドーナツなんか、いつでも食べられるっしょ。つーか、前から思ってたけど、子供のリナが家事するとか、おかしくない?」

「……遼?」

「うちの母さんだって仕事と家事の両立してるよ? でも親ってそういうもんじゃん? 本来はリナがやることじゃないと思うんだけど」


突然、何を言われているのかわからなかった。

いつもにこにこして、犬のようだと思っていた、遼が。



「なぁ、リナ。少しは俺の気持ちも考えてよ」
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