きみと秘密を作る夜
「うちの学年で一番かっこいいのって誰かな?」


誰かの一言に、首をひねる一同。

私は気にせずジュースを飲んでいた。



「森田じゃん? サッカー部の」

「あぁ、まぁ、運動神経いいもんね。ちょっとモンチッチみたいだけど」

「いや、でもやっぱり一番はハルじゃん? 桜木 晴人」


急に出た晴人の名前に、私は飲んでいたジュースでむせそうになった。


晴人が、かっこいい?

しかしみんなはそれに同意する。



「確かにねぇ。背高いし。竹田たちとツルんでて、目立つしね」

「お母さんも若くて美人でしょ? 参観日でもひとりだけ目立ってたもんね。わかる気がするよ。桜木と顔似てるし」


くだらない。

本当にくだらない。


イラ立ちの中で、私が輪から外れようとした時、それまでうつむいていた麻衣ちゃんが、意を決したように顔を上げた。



「わた、私、ハルくんのこと好きなの」


一瞬の静寂のあと、「きゃー!」と悲鳴にも似た声で叫ぶ一同。

しかし私は、状況を理解できないまま。



「ちょっとそれ、どういうこと!?」

「詳しく教えなさいよ!」


口々にはやし立てられ、麻衣ちゃんは顔を真っ赤にさせながら、またうつむく。

その顔が可愛くて、そしてなぜだかとても、憎らしかった。
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