きみと秘密を作る夜
どくん、どくん、と鼓動がうるさい。


私より大きくて硬い体。

晴人だった。



「おかしいなぁ。隣の部屋か?」


私と晴人は、ただじっと、互いの目を見つめたまま。

しばらくの後、足音と共に先生の声が遠ざかり、またガチャリとドアが閉まる音がした。



「晴人……」

「黙ってろ」


完全に先生の足音が消えたのを感じて、晴人は布団をめくった。

私は水から上がったように、大きく深呼吸した。


鼓動はまだ、速いままだ。



すぐに私の布団から抜け出した晴人は、隣の布団の盛り上がりを揺する。



「おい、出てこい。みんなもう戻るぞ」


晴人の声に、恐る恐るだが、布団の山が動き、男子も女子もぐちゃぐちゃに顔を出した。

暗くて誰がどこにいるのかよく見えないは幸いなのかもしれない。



「早くしろよ、タケ。今のうちだ」


晴人に急かされ、男子たちはこそこそと、でも急いで部屋を出て行った。

女子だけになった部屋に、気まずい静寂が訪れる。



「私、胸触られた。誰かわかんないけど。でもあの状況だとわざとじゃないかもだし」


沙耶ちゃんの泣きそうな声。



「ねぇ、ハルくんはどこの布団に入ったのかな?」


麻衣ちゃんの疑問に、私が答えることはなかった。



あれほど寝たかったはずなのに、なのに一気に眠気が吹っ飛んだ。

晴人の視線が、手の感触が、熱が、匂いが、まだここにある気がする。


ずっと消えなきゃいいのにと思っている私は、何なのか。

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