きみと秘密を作る夜
母の怒声が飛んだ。



「話は全部聞いてるわ。どうしてあなたがこの子を庇うの? あなたは無理やり連れて行かれただけじゃない」


違う、そうじゃない。

私が勝手に足を滑らせただけ。


なのに、母は再び晴人を睨み付けた。



「真夜中に女の子を呼び出して、あんな恐ろしい森に連れて行って、怪我をさせて!」

「………」

「本当は、何かいかがわしいことを考えていたんじゃないの? それで怖くなった娘が逃げようとして、足を踏み外したんじゃないの?」


違う、全然違う。

晴人はいつだって私に優しかった。



「お母さん! 違う! 違うの! 晴人は」


言い掛けた私を遮り、母は、はっきりと、晴人に向かって言い捨てた。



「金輪際、うちの娘に近付かないで。二度と関わらないで。もう顔も見たくない」


晴人の母は震えながら頭を下げ、晴人の腕を引いて病室を出て行く。

晴人は最後まで私の方を見ようとはしなかった。


空にはもう、星はなかった。

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