君に毒針
「じゃ、俺帰るから」
なんのタイミングなのか、まだ話は終わってないようなそんな気がしたけど、マイペースらしい先輩は、そう言ってわたしに背中を向ける。
待って、まだなんか言わなきゃいけないことがある気がする。
先輩もジャズすきなんですか?
先輩はいつからわたしのこと知ってるんですか?
どうして傘に入れてくれたんですか?
「あの、!」
なにかひとつくらい伝えないといけない。
上手く言えないけど、こういうのを運命っていう気がする。
手足が痺れたような感覚で、心臓はうるさくて、声が震える。