小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…


お腹を満たしている温かい液体を感じている私は郁人くんとキスを交わして思う。


小説家として活動している私が、溺愛している郁人くんをネタにして、それが彼にバレて…。


彼は最初の印象と違う顔をすることを知った。


根の優しさは変わらない。
たまに意地悪で、私の反応を堪能している。


その時の愛しい夫の表情は全部全部私のことが大好きだって言っているような表情だ。


その表情が堪らなく好きで、愛しく想う。


だから私は、彼と同じ表情を浮かべてこう言った。


「もう一回戦する?」

「………」


驚いた顔。たまには私が彼を出し抜きたい。
フフン♪と鼻歌を歌いたくなるような高揚感の中、私はご満悦な気分で郁人くんの顔を覗き込んだ。


「………詩乃ちゃん。」

「?」




「立てなくなったらごめんね?」




その夜、一晩中。
夫からの寵愛攻撃は止まず、彼の言う通り足腰に力が入らなくなってしまって立てなくなった。







そして思い知る。







私は一生、彼には敵わない。








END
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