2回目のエンゲージ~ハッピー・エンドの その先に~



その視線の先には、ダイニングの椅子に座って、何か本らしきものを持っている夫。

帰りが遅くなって、ついさっき晩御飯を食べ終わったところだ。

彼は何だか、ちょっと不思議な表情で私たちを見ている。

──驚いたような、呆然としたような。


「パパ、どうかした?」

私は小首を傾げて夫を見た。

結婚して22年目。
お互い歳を重ねて、顔や体型も変わってきて。

若い頃のようにイチャイチャはしていないけど。


少なくとも、私にとっては、愛しい旦那様だ。


洗濯物を置いて立ち上がると、まだ不思議な表情をしている夫の近くに腰を下ろした。

子供達からは少し離れているので、まだキャッキャ言っている子供達には聞こえまい。

私は『ん?』と言いながら、夫の顔を覗き込んだ。


「どうしたの?
何か気になることでもあった?」

「いや……。

──うん、今ここではちょっとね」

ん?何か不穏な空気?

大体、何でも話してくれる夫だから、何だか久しぶりに胸がモヤッとした。

「…何?まさか浮気でもした?」

「なわけないだろ?!
いつそんな暇があるんだよ!!」

即答の上、小声で怒鳴るという離れ業をやってのけて、夫は憮然とした表情に変わる。

だって──若い頃の夫は、イケメンで有名だったのだ。

今でも、子供達の友達からイケメンと言われることが多い。
私も、ママ友から現在進行形で羨ましがられている。



───普通以下の自分と夫が釣り合っていないことは、よく分かっているのだ。



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