わかりきったことだけを、




「そろそろ終わろ。送ってく」



ぐーっと伸びをした志葉が言う。


志葉と'恋人同士'になってから、彼は放課後を共にしたあとは毎回絶対家まで送り届けてくれるようになった。


志葉曰く'彼氏の特権'らしいけど、付き合ってない男の子でも家まで送ってくれる人は一般的に考えても多いと思う。


なんでもかんでもその日本語を付ければ特別になると考えているあたり、志葉はやっぱり頭が硬いのかなー…なんて思ったり。


とは言え一人で帰る時より心強いのは確かなわけで、「いつもありがと」と言えば、志葉は柔らかく笑った。




「彼氏だからな、一応」

「一応ね」

「強調すんな。悲しくなるだろ」

「志葉はほっとくとすぐ自惚れるから」

「その口今すぐ塞いでやろーか」

「とか言ってキスしたいだけじゃん」

「せいかーい」

「セクハラ」

「ん。とか言ってさぁ、」




​───浅岡も満更でもないでしょ?




音もなく重なる唇に徐々に慣れている自分がいる。

優しく撫でるように触れ合うそれに心地良さを感じる自分がいる。



志葉とのキスが、私は好きだ。


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