わかりきったことだけを、
5.「すげー好き」





「時に志葉くん、ひとつ報告があるんだけど」

「時に浅岡さん、それは良いか悪いかで言ったらどっち?」

「え、良いよ」

「言って」

「数学のテストの点数なんだけどね、」

「お」

「41点。赤点ギリギリ免れた」

「……は?」

「ん?…ふえ、いたい」




むにゅ、と頬を摘まれた。



「ゆらのちゃん」



志葉がナチュラルに私の下の名前を呼ぶ。
指先に力が入り、摘まれていた頬に少しだけ痛みが走った。



「俺が教えたのにギリギリってどういうことかな」

「志葉が前日に私を悩ませたのが原因」

「…お前、好意の次はそれをネタにする気か?」

「うん。この顔に免じて許して」

「……、上目遣いはやめろって言ったろ」

「志葉にだけだよ」

「……あー、そ」



はい、私の勝ち。


'正式に私の彼氏になった'志葉智咲は、'正式に志葉の彼女になった'浅岡ゆらのの上目遣いに弱い。


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