恋のリードは  彼女から!
「純一さんのことで、ご相談したいんです。」

「純一?彼が何かやらかしたの?」

「いいえ、違います。実は純一さんとお付き合いをさせていただいています。」

「まあ、それは本当?」

「申し訳ございません。」

「温子さん、あなたが謝ることではないわ。」

「まだ日は浅いんですけど。」

「純一はどういうつもりなのかしら?」

「彼はとても真剣です。私の方がしっかりできなくて。」

「つまり、相思相愛ね。なんて素敵なのかしら。」

大おばあ様は心の底からそう思ってくれているようだ。

「温子さん、純一はあの通り世間知らずな部分と、一途な面と、我慢をしているところがあって、全てがなかなか思い通りにならないことで、いつか早川を出ていくのではないかと思ってね。」

「私は彼のことが好きです。ただ好きな気持ちがあるだけで、彼にとって私でいいのかどうかわかりません。」

「温子さん、それは誰が決めるものでもなく、時が経ってみなければわからないことだと、私も若い頃に気づくべきだった。私の周りには相談できるような人もなく、ただ二人でいる時がすべてだったわ。」

「私にはとても難しい選択です。」

「あなたには私がいるわ。恋の苦しみを知っている私が。温子さんには純一を好きでいてくれるその気持ちだけを大切にしてもらえたら、すべては後から付いてくると思うの。」

「そうでしょうか。」

「心配ないわ。それには良一が協力するはずだと思っているし。ホホホ。」

「良一さん、ですか?」

温子は疑わし気に言った。

「良い印象のない俺様をふかしているけどね。あの子は実はたいした子なのよ。フフ。」

「そうなんですか。」

不良の塊のような印象しかない長男の良一に

本当に協力を望めるのか不安がよぎった。

「自分のことは悪く見せているけど、弟が可愛くて仕方がない人なのよ。信じられないでしょ?ホホホ。」

温子はそのことには期待半分な気持ちで

大おばあ様からのディナーの招待を受けた。

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