直球すぎです、成瀬くん
春は好きだ。
ぽかぽか太陽の光が柔らかくて、空気も何だか新しい気がして。
冬には見れなかった色とりどりの花も咲き始めるから、それを見ると、また新しい1年が始まるんだなあと実感する。
道路脇の花壇を見ながらしばらく歩いていたら、少し先に、見覚えのある制服を見つけた。同じ制服だ…
黒っぽい短髪のその人の手には白いビニール袋。………あ、コンビニから出てきたのかな。
すぐそこにお店が見えたのでそう思った。
それにしても、すごく背が高い。先輩かなぁ…
近くを歩くスーツ姿の男性と同じくらいの背丈で、高校生にしては背が高いなと思った。
向かっている方面が同じらしく、私が曲がる予定の角をその人も曲がった。
私も同じようにそこを曲がるとその先の交差点で、信号待ちのために彼は立ち止まっていた。
私はその右斜め後ろ、少し離れた位置で立ち止まって、そこにいる彼をちらりと見た。
無造作に整えられた髪は、ちょうど太陽の光が当たった部分が照らされて少し茶色っぽく見えた。
ワイヤレスイヤホンを耳に挿している。何か音楽とか聴いているんだろうか。
少し気怠げそうな片足重心で、その人はスマホを右手に眺めていた。
ーーーーと、突然。
その人が不意に振り返り、スマホに向けていた目線をこちらに移した。
…えっ、もしかして、見過ぎてた……!?
何かの間違いで何かを感じ取られてしまったのかと、私は慌てて目線を自分のつま先に落とした。
……そ、そりゃ、勘のいい人だったら視線感じるのかも………けど、どうか、気づかれてませんように…………!
「…同じクラス?」
…神様に祈りは届かず、頭の上から低い声が聞こえた。